戦略的重点研究強化プログラム

千葉大学では、本学の「強み・特色」研究の中から学長が指定したプロジェクトに対して、重点的な支援を行っています。これにより、先端的研究拠点とのネットワーク構築と国際共同研究の推進、外部資金の獲得による研究力強化を行い、国際的卓越研究拠点の形成を目指します。

国際粘膜免疫・アレルギー治療学研究拠点形成事業

国際粘膜免疫・アレルギー治療学研究拠点形成事業

本プロジェクトは、粘膜免疫の理論・技術を基盤とし、感染症・アレルギー・癌等の新規予防・治療法を開発研究する新しい学術領域「粘膜免疫・アレルギー治療学」を創成することを目的としています。
現在の注射型ワクチンは、疾病の重症化を押しとどめるだけで、体を感染から十分に守ることはできません。本プロジェクトが開発に着手するワクチンは、病原体の入口である粘膜において免疫力を上げ、病原体の感染そのものを止めることができる「病気にかからない予防ワクチン」であり、完成すれば、「世界初となる次世代型粘膜ワクチン」となります。
平成28年4月に設置したカリフォルニア大学サンディエゴ校(UC San Diego)の「サンディエゴ研究センター」、及び、千葉大学亥鼻キャンパスの「千葉研究センター」を研究拠点とし、日本及び全米規模での臨床試験等を行い、10年後を目途に新規治療法の開発を目指します。

世界最高感度のニュートリノ観測と数値シミュレーションで切り拓く高エネルギーハドロン宇宙国際研究拠点形成

ハドロン宇宙国際研究センターは、「ニュートリノ天文学」と「プラズマ宇宙研究」の2部門により、ニュートリノ探索と理論シミュレーション研究との連携で超高エネルギーハドロン放射源と粒子加速メカニズム解明を目的としています。
「ニュートリノ天文学」部門では、南極点のIceCube国際共同実験に日本から唯一参加し、2022年に建設が始まるIceCubeアップグレード計画に向け、新型検出器「D-Egg」の製造に着手しています。ニュートリノ天文学の進展により可能となったマルチメッセンジャー観測を用い、宇宙線放射源天体特定にも成功しました。
「プラズマ宇宙研究」部門では、「宇宙エンジン」候補天体がどのようにジェットを噴出し、光を放射しているのかをシミュレーションしています。日本の新フラグシップ計算機「富岳」ではニュートリノが発生する環境を計算機内に生み出せると期待され、IceCube観測で得た検出結果をもとに模擬実験が可能になります。宇宙の解明に向け研究に取り組んでいます!

ハドロン宇宙国際研究拠点

キラルな光で拓く革新的物質科学

光の左右非対称な掌性を使って、新分野の確立を目指す

キラリティーとは構成要素が同じなのに立体構造(右手系)がその鏡像(左手系)と空間的に重ならないという異なる性質のことで、キラリティーのある物質の右手系あるいは左手系だけを完全に創り分けることがこの研究のテーマです。不思議なことに身体の中のアミノ酸は左手系しかなく、糖類は右手系しかありません。これはホモキラリティーの謎といわれ、生命科学の大きな謎です。
千葉大学では光のキラリティーがナノの空間(10-9m)で物質を螺旋の構造へ変形させる(キラリティーのない均質な物質をキラリティーのある物質に変形させる)ことを発見しました。原理的には右手系あるいは左手系の物質だけを100%創り分けることも不可能ではありません。キラリティーによって物質の特性は劇的に変化するので、エレクトロニクスやエネルギー技術を大きく進歩させる夢の素材ができたり、化学薬品の製造プロセスが激変させコスト低減ができるかもしれません。

ファイトケミカル植物分子科学

植物が作る多様な化学成分(ファイトケミカル)は、薬や食品、燃料、工業原料などに使われ、人間の生命を支えています。本来、植物化学成分は、外敵に対する植物の防御や繁殖などのために作られた物質です。本研究プロジェクトは、この植物化学成分に関する分子科学的な原理を明らかにします。
多様なファイトケミカルは、どのように植物ゲノムの機能によって作られ、その植物ゲノムはどのような多様性と普遍性を有しているのか、これらのファイトケミカルはどのような化学構造を有し、どのような生物機能を発現するのか、さらに、これらのゲノム遺伝子の発現やファイトケミカルの生産は、どのように環境に応答して変化するかを解明します。研究成果は、植物成分による新しい医薬品や試薬の開発、健康機能食品の開発、化粧品・香料・燃料などの工業原料に応用して、私たちの生活を豊かにします。

植物が作る多様な化学成分の可能性を引き出す

マルチモーダル計測医工学

画像による疾病診断の手法を開発する

CTやMRI、超音波などの診断装置をモダリティと呼びます。本研究プロジェクトでは、これら様々なモダリティを使い、病気によって引き起こされる細胞サイズから臓器サイズまでの多様な体内の変化について、どこで何が起きているのかを工学技術で解明し、関係性を明確にしていきます。また、これらの知見を利用して、最終的に高精度で低侵襲な診断・治療の実現を目指しています。例えば、固形がんなどの疾患を対象に、超音波、MRI、光などを用いて物性・構造・機能を計測し、それらを横断的・階層的に解析する研究を行っています。また計測装置自体や信号処理・画像処理手法についても新たに開発しています。本プロジェクトはまた、「マルチモーダル計測医工学の国際拠点形成」として日本学術振興会の平成29年度研究拠点形成事業(5年間)に採択され、フィンランド、タイ、中国、カナダ、米国、フランス、ニュージーランドとの共同研究を活発に進めています。

先端マイクロ波リモートセンシング拠点形成

本研究プロジェクトでは、小型衛星群による大陸規模地殻変動と環境の観測を目的として、100kg級の人工衛星の開発に取り組んでいます。この小型衛星には、我々が独自に開発した円偏波合成開口レーダ(CP-SAR)と呼ばれるセンサを搭載します。このセンサで用いるマイクロ波は、雲、霧、煙などを通過するため、曇天や夜間に関係なく観測できます。24時間全天候型のセンサであることが大きな利点です。
本事業では、CP-SARの性能を確認するために、CN235機に搭載した飛行実証実験により、世界初の円偏波画像の取得に成功しました。第2期中期目標期間内での実績は、世界に先駆け小型・軽量、且つ円偏波を送信できるCP-SARを開発したことです。本拠点では、令和3年度までにグローバル環境・災害観測用の小型衛星CP-SAR及び運用ネットワークを実現するため、国内外のSAR画像信号処理、応用等の関連研究者の人材交流を推進し、グローバル災害・環境監視に役立てていきます。

宇宙から地球の地盤を観測する